S1000RR裁判書類その10 A氏への反論 メカニックTさんの陳述書 H28年6月27日(7月8日提出)
ここからは、お二人のプロの方々より、私側の証人として寄せて下さった陳述書を公開します。
先ずはエンジンチューナーであるTさん。
D;rexの外注先として私のS1000RRの修理をしていただきました。
Tさんは名門チームでもメカをされる方。
その実力もさることながら、漢気に溢れる方でもありました。
今回A氏に訴えられたことで、エンジンの修理を実際行ったTさんに、ダメ元で協力をお願いしたところ、快諾頂くばかりか、裁判所での尋問にも応じてくださいました。
それは、この狭いバイク業界にあって、それが取るに足らない相手であっても「敵」を作ることに成りかねない行為です。にも拘らず。
これは、Gトライブさんも同様でした。
自分が見たこと、やったことには自信があるし、名前も看板も出してくれて構わない。
私に有利に働くような嘘はつけないが、事実は事実として証言する。
そう仰いました。
なんでしょうこの正義感。プロフェッショナリズム。
普通、面倒事は避けますよね。
「お前らの下らない喧嘩に関わりたくないから巻き込まないでくれ」
商売への影響など考えると、そういわれても止む無しと思っていたのですが…。
とても嬉しい誤算でした。
仕事としてお客さんからお金を頂く上での常識。
プロとして仕事をうけるという常識。
これらに対する、これまでの自分の概念が、バイク業界では通用しないのか。
そう思ってウンザリしかけていた自分でしたが、思いを改めました。
以下は、Tさんからの、主にエンジン焼き付きやオイルロックに関する専門的知見に基づいた、A氏自説への反駁です。
私にとっても勉強になりました。
【要約】
・自己紹介とプロとしてのキャリア。レースメカとしては全日本レギュラーチームと8耐チームへのメカニックとしての参加など。
【解説】
某有名な内燃機屋さんと某有名イタリアン二気筒専門店で修行されたのですね。
某レジェンドたちの元で。
現在は全日本のレースフィールドがメインですが、ホビーレーサーは勿論、街乗り車両も受け付けてます。
【要約】
(私のS1000RRをD;rexで見て以降の診断、判断状況説明。完全な焼き付きが確認された。)
・エンジンの状態から推察される焼き付き発生時期について。
・A氏の伝票にはオイル交換作業がある。オイル交換したばかりの車両が内部構成パーツ類に問題ないのに走行直後に焼き付くのは考えられない。
・よって(予選)走行前にトラブルを抱えていた可能性が非常に高い。
・動画によると走行開始直後から異音がある。これはメタルの打刻音と思われる。エンジン内部の不調の証拠である。
【解説】
解説するまでもない、分かりやすい説明です。
A氏は主張を「エンジンのトラブルは引き渡し後、予選走行によって起きた」としていましたが、事実から論理的に推測されるバックキャストでバッサリ否定してくださいました。
【要約】
・焼き付きの前兆はレース(予選)前から生じていたと考えるのが合理的。
・オイル交換直後の焼き付きである以上、以前から症状があったと強く推察される。
・A氏が「被告がねつ造したもので信用できない」とするTの陳述書(※先に提出済み)は、文章原案は被告が作成したが、自分が目を通して署名捺印したものである。故に誤りはない。
・自分自身でエンジンを確認したうえで、レース以前から焼き付きが発生していた可能性が高いと考え、A氏の整備に問題があったと指摘した。
・通常の走行でオイルロックすることは考えられない。
・オイルロックの原因を一切検討することが無く、エンジンが始動したからと車両を顧客に引き渡すことなどあり得ない。
・軽い焼き付きであればエンジンは再始動することはある。
・エンジンが掛かったから問題ないとは即断できない。
・最終的な判断はエンジン分解になるとしても、オイルロックの原因が不明で、異音もしている状態で、清掃作業程度で顧客に引き渡すことは、危険極まりない。
・よってA氏の修理が「不適当」と評価するのは当然だ。
【解説】
説得力があります。
焼き付きは、クランクシャフトの1番MJ,CJが完全に焼き付いていたようでした。メタルの摩耗によるクリアランスの増大かオイルポンプが疑われました。
(蛇足ですが参考まで。私が知るS1000RRのトラブルは大半がビッグエンド、1番の焼き付きでした。FSWを走るライダーが多かったからかもしれませんが。鈴鹿などはどうなのでしょうか)
予選動画も検証いただき、
異音は走行前からであること。
コースイン後の低速時からメタルが逝っている際の音がすること。
それであれば、A氏の手元にあった時から不調は発生していただろう証明になること。
これらを確認してくださいました。
動画の音で、異変に気付かない方は、居ませんよね。
でも、バイク屋さんに「燃焼室に残ったオイルが焼けるまで暫く続く」と言われると、不安ながらも信じてしまう素人は、私だけでないはず…。(因みに焼き付きは初体験でした)
この最初から聞こえ続ける異音は、A氏の店でも聞こえていました。だから、「エンジンは大丈夫?」と聞いたわけです。
ですが、A氏には異音として聞こえなかったのかもしれません。
A氏の耳がオカシイのか初めて聞く音で解らなかったのか、理由は分かりませんが、裁判の過程においては、A氏は動画の異音を認めています。
しかしながら今度は、店では異音は無かったと、言い出したわけです。
それをロジカルに否定してくださいました。
そして、私が提出していた多数の方からの署名や陳述に対し「被告のねつ造だ」と信用性を否定するA氏に対して、当事者として否定してくださいました。
最大のポイントは「オイルロックの原因を一切検討することが無く、エンジンが始動したからと車両を顧客に引き渡すことなどあり得ない。」という、
私が考える常識は、本物のプロにとっては当たり前の顧客対応だ、という点でした。
(A氏が「オイルロック」の意味を履き違えている可能性もあります)
「ボクが言うオイルロックとお前が言うオイルロックは違う!」
なんて言われると、困ってしまうのですが…。
また、焼き付いていたらアイドリングしないとするA氏の主張も、あっさり否定してくださいました。
そして、同業者としてA氏の修理は「不適当」だと断じてくださいました。
同じ業界であれば、少なからず仲間意識で言葉を濁す思考が働くのが世の常。
ですが、私の懸念は杞憂に終わりました。
バッサリと、A氏の主張を切って捨てて下さいました。
実に痛快な「漢」です。
Tさんの「漢エピソード」は他にも有るのですが、それはまたいずれ…。
次回もプロからの証言が続きます。